兵庫県赤穂市「社会意識に関するアンケート」ご報告

2020年2月20日から兵庫県赤穂市にお住まいの方々を対象として「社会意識に関するアンケート」を実施しました.災害リスクの高まりや景気状況の変化などによって日々の生活に様々な問題が起こっている昨今,国政のみならず地方政治と私たちの関わりのあり方に改めて目を向ける必要性を痛感し,2014年以来、赤穂市を対象として進めてきた学術研究の一環です.今回も1103名と非常に多くの方から貴重なご回答を頂戴しました(回収率53.8%).心より御礼申し上げます.

以下から,単純集計結果報告書をご覧いただくことができます.

「社会意識に関するアンケート」単純集計結果報告書

兵庫県赤穂市でアンケート調査を実施しています

2020年2月20日より,関西学院大学社会学部・稲増一憲教授と共同で,兵庫県赤穂市の有権者2000名の方々を対象にアンケート調査を実施しています.

お手元にアンケート用紙が届いた皆様,できればご協力をお願いいたします.返送用封筒(送料不要)をお使いいただき,3月15日までに郵便ポストに投函していただければ幸いです.

ご協力いただいたデータの集計結果は5月初旬頃に本ウェブサイトでご報告する予定です.

→赤穂市広報Facebookでご紹介いただきました:https://t.co/KP9NgJolAr

→2020年2月22日付赤穂民報2面でご紹介いただきました:http://www.ako-minpo.jp/data/d00143/f14384_0.pdf

新聞記事へのコメント掲載

新型コロナウイルス肺炎流行に関する情報拡散について,2020年2月1日付の朝日新聞東京本社版等の社会面(同1月31日付配信の朝日新聞デジタル記事)にコメントが掲載されました.以下,私のコメント部分を引用します.

「ネット上の人間行動を研究する三浦麻子・大阪大教授(社会心理学)の話」

新型肺炎の致死性などが不確かで状況が変化するなか、人は、恐怖や不安にかられて身近なリスクをより知りたがる。そうしたリスクについて、自分の予想と合致するような情報が流れてくると、デマでも気づかずに受け止めてしまう傾向がある。WHOや厚生労働省といった責任ある機関が出す感染症への対応や対策など、一次情報をウォッチし続けることが重要だ。

また今回、自分の正しさを主張するために、このニュースに乗じてヘイト的な言説を拡散している人もいるようだ。社会的に立場のある人や公職にある人は自らの意見よりもまず、客観的な情報の発信に努める必要がある。良かれと思った行為でも、結果的にデマの拡散につながることもある。いたずらに情報を発信しない、というのも一つのあり方だ。


本コメントに関連する下記の研究についても,先般朝日新聞でご紹介いただきました.

Komori, M., Miura, A., Matsumura, N., Hiraishi, K., & Maeda, K. (2019). Spread of risk information through microblogs: Twitter users with more mutual connections relay news that is more dreadful. Japanese Psychological Research, 63(1).

論文早期公開

2019年11月に掲載が決定していた以下の論文が早期公開されました.それに合わせて,研究内容を日本語でまとめた記事を作成したのでご覧下さい.

Komori, M., Miura, A., Matsumura, N., Hiraishi, K., & Maeda, K. (2019). Spread of risk information through microblogs: Twitter users with more mutual connections relay news that is more dreadful. Japanese Psychological Research, 63(1).

日本語によるまとめ記事
SNSによるリスク情報の拡散メカニズムの解明―どのようなリスク情報が拡散されやすく,どのような人が拡散させやすいか―

2019年12月29日付の朝日新聞デジタル(および30日紙面)記事で研究が紹介されました.


以下のように大阪大学からプレスリリースをいたしました.

SNSによるリスク情報の拡散メカニズムを解明
―どのようなリスク情報が拡散されやすく、どのような人が拡散させやすいか―

【研究成果のポイント】

  • SNS上でどのようなリスク情報がどのような人によって拡散されやすいかを解明
  • 従来の理論モデルでは説明できない、SNSにおける情報拡散メカニズムの存在を提示
  • 虚偽情報の拡散を抑制するには信頼性をきちんと確認する「ハブ」の存在が重要であることを示唆

大阪大学大学院人間科学研究科の三浦麻子教授と大阪電気通信大学情報通信工学部の小森政嗣教授らの研究グループは、SNSでリスク情報が拡散されるメカニズムについて、実際に広く拡散したツイートの伝達経路を追跡し、拡散に影響を及ぼすリスクのタイプと拡散に加担しやすい利用者の特性を明らかにしました。

SNS上に利用者同士のつながりをあまり持たない利用者は、リスクのタイプにかかわらず多くのリスク情報を拡散させる傾向があったのに対して、多くのつながりを持つ利用者は、全体としてはリスク情報をあまり拡散させない一方で、「恐ろしさ」が強く感じられる情報については拡散させやすい傾向があることが示されました。

本研究成果は、日本心理学会が刊行している国際学術誌「Japanese Psychological Research」に2019年12月27日(金)(日本時間)に公開されました。

プレスリリースフルバージョンはこちら

新聞記事へのコメント掲載

2019年12月14日(電子版)および15日朝刊(紙面)の日本経済新聞「科学&新技術」に心理学実験の再現性に関する以下の記事が掲載されました.私のコメント箇所を太字にしています.なお,この引用は日本経済新聞「記事を引用する場合の条件は何ですか」を参照の上,その条件を満たすものと判断しています.


「⼼理学実験、再現できず信頼揺らぐ 学界に⾒直す動き」

「つまみ⾷いを我慢できる⼦は将来成功する」「⽬を描いた看板を⽴てると犯罪が減る」――。有名な⼼理学の実験を検証してみると、再現できない事態が相次いでいる。望む結果が出るまで実験を繰り返したり、結果が出た後に仮説を作り替えたりする操作が容認されていた背景があるようだ。信頼を失う恐れがあり、改めようとする動きが出ている。

ノーベル賞のパロディー版として⼈気がある「イグ・ノーベル賞」は9⽉、ドイツの⼼理学者、フリッツ・ストラック博⼠に2019年の⼼理学賞を贈った。授賞理由は「⼈が⼝にペンをくわえると笑顔になり気分も幸せになることを発⾒し、その後そうはならないことを発⾒した」。

ストラック⽒が1988年に発表したこの研究内容は、著名な経済学者が「本⼈が知らない間に判断や考えを操作できる例」として引⽤するなど⾼く評価された。ところが別の研究グループが⼤規模な実験で検証したところ同じ結果は出ず、ストラック⽒も17年に「効果は思っていた以上に⼩さかった」と認めた。

九州⼤学の⼭⽥祐樹准教授は「有名な⼼理学の実験で最近、再現できない事例の報告が相次いでいる」と話す。

最も典型的な例とされるのは⽶スタンフォード⼤学で60〜70年代にまとめられた「マシュマロ実験」だ。研究者は幼い⼦どもの前にマシュマロを置いてしばらく席を離れる。その間にマシュマロのつまみ⾷いを我慢できた⼦は「その後、⾼い学⼒などを⾝につけ社会的に成功する」という内容だ。

この研究は「⼦どもを我慢強く育てれば成功する」というメッセージを教育界に与え影響⼒は⼤きかった。しかし18年に他のチームが再現した実験では、つまみ⾷いを我慢する影響は限定的だった。今では「教育や家庭の環境の⽅がより重要で、我慢強ければ成功するとは限らない」という考え⽅が⼀般的だ。

また「⽬で監視する図柄を⾒た⼈は誠実に振る舞う」という実験結果が06年に公表され、不法侵⼊や窃盗などを防ぎたい場所に⼈の⽬を模した看板やポスターが設置され
た。この結果も11年の実験で再現に失敗した。

スタンフォード⼤で71年に実施された「監獄実験」では、組織や役割が⼈格に⼤きな影響を及ぼすという結果を導き出した。実験の協⼒者を看守役と囚⼈役に分け、⼤学内に作った模擬的な監獄にとじ込めて変化を追跡した。実験を計画した⼼理学者が、看守役に囚⼈役を虐待するよう促していたなど不適切な介⼊があり、やはり再現できない代表的な事例にあげられる。

⽶科学誌「サイエンス」は15年、⼼理学研究への信頼が揺らいでいる事態を重く⾒て、主要な学術誌に掲載された⼼理学と社会科学の100本の論⽂が再現できるかどうかを検証した。結果は衝撃的で、同じ結果が得られたのはわずか4割弱にとどまった。⽇本の代表的な⼼理学会誌「⼼理学評論」も16年、再現できない実験に関する問題を特集号として取り上げた。

⼼理学で再現できない研究がなぜ⽬⽴つのか。⼤阪⼤学の三浦⿇⼦教授は「捏造(ねつぞう)ではないものの、結果を都合よく利⽤する研究が⼀部で許容されてきた」と解説する。100年以上の歴史はあるが、確⽴した⼿法がなかった。実験を何回繰り返すかを事前に決めず望む結果が出た時点で打ち切ったり、結果の⼀部だけを論⽂に載せたりする慣習があった。実験結果に合うよう仮説を作り替えることもあったようだ。

再現できなくても「元の実験が真実ではなかった」とすぐに断定できない点がやっかいだ。三浦教授は「妥当な⽅法で実験していても再現性が低くなる可能性はある。不適切な研究と区別しなければいけない」と指摘する。

⼭⽥准教授は「⼼理学は科学でないと受け⽌められるところまで来ている」と警鐘を鳴らし、研究のやり⽅の刷新を訴える。

著名な研究だとそのまま受け⼊れるのではなく再現実験などで常に検証することや、研究計画を学会誌に事前に登録して不正を防ぐ取り組みなどが必要だと提案している。欧⽶や⽇本の⼀部の学会誌が査読付きの事前登録制度を導⼊するなど、改⾰の動きは出ているという。

ただ、時間と労⼒を費やして再現実験をしても⾼い評価は得にくい。事前登録制度は査読をする研究者の負担が⼤きいなど、改⾰を進めるうえでの課題も多い。「これまでのやり⽅で⼤きな問題はないと考える研究者が結構いる」(⼭⽥准教授)。意識の刷新が最も必要なようだ。

(科学技術部 草塩拓郎)


九州大学の山田祐樹さんと私のコメントが掲載されています.執筆した記者の方からは,2名ともに比較的長時間の取材を受け,かなり突っ込んだ意見交換をしました.どの事例を挙げるかも難しいような,大きく,入り組んでいる問題を,論文より圧倒的に制約が大きい新聞記事という紙幅の中で,うまくまとめて下さっているし,研究者の意識を変えることが必要,という「煽り」で結んでいただけたのもよかったと思います.

個人的には,コペルニクス的な転回ではなく蠕動的に,しかし確実に,心理学を研究する者たちの意識は変わりつつあることを感じています.ただ,意識を行動に結びつけるのは案外難しいので,研究プロセスの様々なフェーズにおけるより積極的な大小の「改革」が必要ではないかと考えています.

なお,誤解されると困りますが,私は「だから心理学なんてもう(いや,そもそも?)ダメ」とはまったく思っていません.思っていないからこそ,こうした問題に正面から取り組むことが大切だと考えています.確かに,研究過程にはいくつも大罪を犯しかねない場面が存在します.それはまるで人生そのものです.その意味で,これは心理学だけの問題ではなく,科学が人間によって創り出されたものである以上,あらゆる科学に携わる者が常に意識すべきことであり,そして,人間の原罪に関わる問題です.

以下に,私がこれまでに関わってきた,心理学の再現性問題に関する論文や記事へのリンクを掲載します.どの資料も,どなたでも無料でご覧いただけます.この問題についてより詳しく知っていただくことができると思います.

論文掲載決定

以下の論文が,Japanese Psychological Researchに掲載されることが決まりました.

Komori, M., Miura, A., Matsumura, N., Hiraishi, K., & Maeda, K. (in press). Spread of risk information through microblogs: Twitter users with more mutual connections relay news that is more dreadful. Japanese Psychological Research, 63(1).

プレプリント(著者最終稿)をこちらからダウンロードしていただくことができます.

Abstractの日本語訳
マイクロブログを通じたリスク情報の拡散
マイクロブロギングによるリスク情報の拡散を解明する上で,少数の著名ユーザの活動に加えて,多数の平均的ユーザの行動を理解することは重要である.自然災害,原子力災害,感染症を含むいくつかのリスク情報トピックスに関する10の実際に広く拡散したツイートの伝達経路を追跡し,Slovicのリスク認識モデルに基づいて各ツイートを分類することにより,リツイートに影響を及ぼすリスクの型を同定した.さらに,リツイートしたユーザとしなかったユーザのタイプを検討した.フォロワー(つまり、ユーザーをフォローしているユーザー)やフォロイー(ユーザーがフォローしているユーザー)という形でほとんどつながりのないユーザや,つながりの中に共通のフォロワーの割合が低いユーザは,リスクのタイプに関わらず,大量のリスク情報をリツイートする傾向があった.一方,共通フォロワーの比率が高いユーザは,全体としてリスク情報をリツイートしなかったにもかかわらず,それが怖いと感じられる程度が高いとリツイートする傾向がより大きかった.これらの結果は,リスク情報がTwitterネットワーク内で拡散するメカニズムには,情報交換と個人的反応の社会的共有の2つがあることを示唆している.

アンケート調査調査結果のご報告

2019年4月から5月にかけて、大阪府枚方市にお住まいの方々にアンケート協力依頼文書をポスティングさせていただき、市議会議員選挙に関わる調査を実施しました。このたび、単純集計結果がまとまりましたので、以下のPDFにて公開しました。ご協力をありがとうございました。本研究は、前任校である関西学院大学で(現在は非常勤講師として)指導を行っている学生の卒業研究であり、成果は卒業論文としてまとめられる予定です。

単純集計結果(PDF)

ご協力下さった方々に改めて心より感謝申し上げます。

アンケート調査結果のご報告(兵庫県赤穂市)

2019年3月4日に、兵庫県赤穂市にお住まいの2723名の方々に「社会意識に関するアンケート」を郵便にてお送りしました。3月31日までに、1229名の方から回答をご返送いただくことができました。

私たちは、災害リスクや景気状況の変化などによって日々の生活に様々な問題が起こっている昨今、国政のみならず地方政治と私たちの関わりのあり方に改めて目を向ける必要性を痛感し、2014年以来、赤穂市を対象のひとつとして学術研究を進めてきました。そして、今回このようなアンケート調査を実施させていただきました。

集計結果をこちらで公開いたしました。特に注記のない数値の単位はすべてパーセント(%)です。どうぞご覧下さい。改めて、多くの方々にご協力を賜りましたことに、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

関西学院大学社会心理学研究センター

客員研究員・大阪大学大学院人間科学研究科教授・三浦麻子
センター長・関西学院大学社会学部教授 稲増一憲

2019年5月18日付「赤穂民報」紙で,本調査結果の紹介記事を掲載していただきました.

論文掲載決定

以下の論文が『社会心理学研究』に掲載されることが決まりました。

稲増一憲・清水裕士・三浦麻子 (2019). 評定尺度法の反応ラベルによる影響の補正:公的組織への信頼を題材として 社会心理学研究, 35(1).

本研究は、東日本大震災が公的組織への信頼にもたらした影響の検証を通じて、評定尺度法において、反応ラベルが異なる2種類の調査で得られた値を比較可能にする方法を提案する。震災をまたぐ世界価値観調査とアジアン・バロメーター調査においては、いずれも「自衛隊」「警察」「裁判所」「テレビ」「政党」「国会」という6つの組織への信頼が測定されているものの、評定尺度の反応ラベルが異なる。そこで本研究は、この影響をベイズ統計モデリングによって補正することで、信頼の変化について検証した。その結果、「自衛隊」への信頼が上昇したのに対して、「裁判所」「テレビ」「政党」「国会」への信頼が低下したことが明らかになった。本研究が示したような統計モデリングを用いた社会調査データの補正は、震災の影響の検証に留まらず、短期的あるいは長期的な社会の変化について検証する際に有効である。

この研究は,マスメディアへの信頼の測定にワーディングがもたらす影響を大規模社会調査データとWeb調査実験の分析を通して明らかにした稲増・三浦(2018)を発展させ,それを統計モデリングにより補正する手法を提案するものです.著者最終稿を PsyArXiv からどなたでも閲覧・ダウンロードいただけます.