ベイズファクターによる心理学的仮説・モデルの評価
岡田謙介
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ベイズファクターは,ベイズ統計学の枠組みにおいて,データの情報に基づいて心理学的仮説やモデルの比較・評価を行う上で基本的かつ本質的な量である。複雑なモデルでは必ずしもベイズファクターの計算が容易ではない場合があり,このことが従来ベイズファクターの実用を妨げる大きな要因となっていた。しかし,ブリッジサンプリングに代表される数値的推定法の発展によってこの問題は解消に向かっており,心理学研究におけるベイズファクターの実用性もますます高まっていくと考えられる。そこで本稿は,ベイズファクターの基本的な考え方とその算出法についての導入的な総説を提供する。また,従来型の仮説検定法との対比も含めつつ,とくに近年の心理学研究においてベイズファクターが新たな注目を集めている理由について論じる。
キーワード:ベイズファクター,ベイズ的仮説検定,Savage-Dickey法,ブリッジサンプリング