論文掲載決定

下記の論文が『社会心理学研究』に掲載されることが決まりました.

稲増一憲・三浦麻子
マスメディアへの信頼の測定におけるワーディングの影響:大規模社会調査データとWeb調査実験を用いて

マスメディアへの信頼の低下という問題は、インターネットの普及やマスメディアを攻撃することで支持を集める政治家の増加とともに国内外で注目を集めているが、日本では社会調査におけるマスメディア(テレビ・新聞・雑誌)への信頼の測定項目が調査ごとに異なっており、信頼低下についての検証は難しい。過去に行われた調査の結果を整理したところ、4件法の選択肢にどのような副詞を付すか、新聞・雑誌への信頼をまとめるか新聞単独の信頼を尋ねるか、信頼の測定対象が組織だと明示するかという3要因によって信頼の評定が大きく異なっていた。これらの差が、質問項目のワーディングが信頼の評定に影響を与えるという因果関係に基づくかを明らかにするためWeb調査を用いたランダム化比較実験を用いた検証を行った。その結果は社会調査と一貫しており、質問文と選択肢により、最大で25%以上信頼の評定が異なっていた。これは、マスメディアへの信頼の測定において、明確な理由をもってワーディングを選択することの必要性を強く示唆する。

キーワード:マスメディア、信頼、社会調査、ワーディング、Web調査実験

これまで日本で実施されてきた,サンプルの代表性が確保された大規模社会調査によるマスメディアへの信頼の測定項目は,調査間で一貫しておらず,そのことが結果に影響を及ぼしている可能性が危惧されます.それらの結果でもって「マスメディアへの信頼の時系列的変化」を論ずるときに大きな障害となるからです.しかし,こうした点が十分検討された知見は見当たりません.そこで本研究では,これまでの社会調査において用いられてきたマスメディアへの信頼の測定項目を分類・整理し,測定項目の違いが回答にもたらす影響に関する仮説を導出した上で,Web調査によるランダム化比較実験によりその検証を行いました.

著者最終稿は,ResearchGateで公開しています.内容に関する問い合わせは第一著者の稲増さんにお願いします.

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