2018年9月15日に電気通信大学で行われた情報処理学会エンタテインメント・コンピューティング(EC)2018で「人を対象とする行動学研究における再現性問題」と題した招待講演を行いました.当日の資料はここから閲覧・ダウンロード可能です.お招き下さり,どうもありがとうございました.
概要
ありとあらゆる科学(を標榜する学問)にとって,ある知見が信頼に足るものかどうかを確認するもっとも有力な手段は,一度得られた実験結果についてそれが再現できるかどうかを検証することである.こうした科学の再現性問題は,2014年初頭以来世間を騒がせていた「STAP細胞問題」によって,決して望ましい形だったとは言えないが,一般にも広く知られることとなった.心理学においても,これと同じ時期に,研究の信頼性の著しい低下につながるような,あるいはそれを疑わせるような出来事が相次いで起きたが,その原因の少なからぬ部分は,研究者たちが再現性検証の試みを軽視してきたことにあるとされた.本講演では,心理学のような人を対象とした行動学研究において,研究プロセスそのものに内在するものも含めた再現性を低からしめる問題としてどんなものがあるかを述べ,それらを解消するために現に行われている取り組みについて紹介する.