遠見書房から,以下の書籍が刊行されました.第14章「集合行動とマスコミュニケーション」を執筆しています.
野島一彦・繁桝算男(監修)・竹村和久(編)
公認心理師の基礎と実践 第11巻『社会・集団・家族心理学』
遠見書房
公認心理師資格取得のための学部必修科目「社会・集団・家族心理学」のテキストです.同様の企画は他社からも今後多く展開されますが,本書がもっとも早く出版されました.書籍全体の章構成はこちらをご覧ください.集合行動とマスコミュニケーションは,私の専門領域にストライク,というわけではないのですが,社会心理学や集団心理学的な観点から現実社会をどう捉えることができるか,を意識して書いたたつもりです.それを端的に示す章のまとめの部分をちょっぴり引用します.
集合行動やそれによる集合現象は,私たちが状況によっていかようにでも動かされることを示す最たる例である。「起こす」というより「起きる」ものであるだけに集合行動や集合現象のメカニズムに関する科学的な実証は困難だが,事例から学ぶべき点は多い。危機事態に多く集合現象が発生するように,日常とは異なる状況におかれることは人間の心理に強い影響力をもち,それによって秩序というタガが外されてしまうことがある。また,常にマスメディアからの情報過多な状況にあるなか,日常においても私たちを動かそうとする状況の力はより多様で強いものになっている。「常に賢明であれ」「軽挙妄動はしないように」と言うは易いが行うは難し,である。しかし,これを逆説的に考えれば,集合行動の中にこそ人間の本性を見て取ることができるということかもしれない。