2025年7月の参議院選挙にあわせて、有権者の意識変化を継続的に追跡するパネル調査を朝日新聞社と共同で実施し、その調査データを誰でも無料でダウンロードできるかたちで公開しました。
本調査は、2025年2月から投票直前の7月18日まで、合計11回にわたり行われました。無作為抽出※2ではないものの、同じ回答者を継続的に追跡することで、有権者がどのように選挙過程に反応し、支持や態度を変化させていったのかを精緻に捉えることが可能になっています。一般的な社会調査が「社会全体の似姿」を描き出すのに対し、有識者の告示前から選挙直前までの「個人の思考と態度変化との関連」を時系列で観察でき、投票行動や政党支持、政策への関心、社会観や価値観といったテーマを連続的に捉えた国内でも貴重な記録です。
今回、本調査データを、学術研究だけでなく教育や報道の現場でも広く活用いただける公共的資源(オープンデータ※3)として公開します。
本調査データは、それぞれの調査回について、
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ローデータ(ファイル名 2025*SurveyDatFull.csv, 文字コード UTF-8)
変数リスト(ファイル名 2025*VarList.csv, 文字コード UTF-8)
調査票(ファイル名 2025*QualtricsSurvey.pdf)
の3種類から成り、以下のURLからダウンロード可能です。
大阪大学三浦研究室・朝日新聞社共同調査 The UOsaka-Asahi Survey
https://sites.google.com/view/the-uosaka-asahi-survey/
研究の背景
2025年7月の参院選は、今後の日本の政治と社会のかたちを左右する重大な転換点となることが想定されました。与党が過半数を維持できなければ、現政権の求心力は大きく低下し、政権交代や連立再編が現実味を帯びます。一方、右派勢力が議席を伸ばせば、移民政策や教育、家族制度などに対する政治の姿勢が大きく右傾化する可能性があります。また、物価高や子育て支援、年金・医療制度といった暮らしに直結する政策についても、どの党が主導権を握るかで方向性が変わります。そういった意味でも、政権の命運だけでなく、日本社会の価値観や制度の枠組みそのものが問われる選挙と考えられました。
そのため、このような時期だからこそ、この選挙に対する有権者の意識の変化を記録することは重要な意味を持つと考え、パネル調査を「大阪大学三浦研究室・朝日新聞社共同調査」として計画・実施しました。
調査及びデータの内容
この共同調査は、2025年2月から5月にかけて募集した参加者に対し、投票直前の7月18日まで調査を行いました。特に公示後は数日おきに4回実施し、時間的解像度の高いデータを得ています。対象はWeb調査会社の登録者で、性別・年代・地域分布を人口統計に近づける工夫は行いましたが、無作為抽出ではありません。そのため、社会全体を代表する標本とは言えませんが、同じ人々に繰り返し回答をお願いすることで、個人の意識の移り変わりを丁寧に追跡できる構成になっています。
主な調査項目は以下の通りです。
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参院選の投票意向
一番好きな政党と一番嫌いな政党。それらに対する好感度,それらの政治的争点への態度推定
システム正当化傾向、権威主義的態度、陰謀論的信念、政治関連の情報収集媒体と頻度
本調査及びデータの意義
一般的な社会調査が「社会全体の似姿」を描き出すのに対し、本調査は「個人の思考と態度変化との関連」を時系列で観察することができます。投票意向や政党への好感度、政策への関心、社会観や価値観といったテーマについて、告示前から選挙直前までの過程を連続的に捉えたデータは国内でも極めて貴重です。これにより、有権者がどのように政治や社会の動きに反応し、考えを変えていったのかを実証的に検討できる基盤を提供します。学術研究にとどまらず、教育や報道にも資する公共的資源としての価値を持つことが期待できます。
本調査データの一部は朝日新聞連載「ネット意識と選挙」で記事化されています。
https://www.asahi.com/rensai/list.html?id=920



