新型コロナウイルス感染禍に関わる社会心理学研究(ウェブ調査)情報まとめ

私を含む心理学者による研究グループで実施した標記の調査について取材や寄稿依頼を多くいただいております.

ご依頼の際は,まず,

  • いわゆる「自業自得」に関する項目を含む国際比較調査はこちら
  • 日本在住の一般市民を対象とするパネル調査(2020.1-継続中)はこちら

にお目通しいただいた上で,要点をメールあるいはツイッターDMでお知らせ下さい.

ご協力のほどよろしくお願いします.

「學士會会報」に寄稿しました

學士會会報2020年5月号(942号)に以下の短文を寄稿しました.

三浦麻子 (2020). SNSを賢く使うために知っておきたいいくつかのこと. 學士會会報942号

こちらから著者最終稿をご覧いただくことができます.

「47NEWS」に寄稿しました

「コロナ感染者が謝罪、日本だけ?「悪者認定」がもたらす致命的問題」と題する記事を47NEWS(共同通信社)に寄稿しました.
https://this.kiji.is/628762967745709153?c=39546741839462401

新型コロナウイルスに感染した人たちに謝罪を求めたくなることがあるかもしれません。それが人間の性(さが)なのですから。しかし、そんな気持ちになったときは、是非、自分の心にブレーキをかけてください。自分のために。そして、社会のために。

新聞記事へのコメント掲載

新型コロナウイルス肺炎流行に関する情報拡散について,2020年2月1日付の朝日新聞東京本社版等の社会面(同1月31日付配信の朝日新聞デジタル記事)にコメントが掲載されました.以下,私のコメント部分を引用します.

「ネット上の人間行動を研究する三浦麻子・大阪大教授(社会心理学)の話」

新型肺炎の致死性などが不確かで状況が変化するなか、人は、恐怖や不安にかられて身近なリスクをより知りたがる。そうしたリスクについて、自分の予想と合致するような情報が流れてくると、デマでも気づかずに受け止めてしまう傾向がある。WHOや厚生労働省といった責任ある機関が出す感染症への対応や対策など、一次情報をウォッチし続けることが重要だ。

また今回、自分の正しさを主張するために、このニュースに乗じてヘイト的な言説を拡散している人もいるようだ。社会的に立場のある人や公職にある人は自らの意見よりもまず、客観的な情報の発信に努める必要がある。良かれと思った行為でも、結果的にデマの拡散につながることもある。いたずらに情報を発信しない、というのも一つのあり方だ。


本コメントに関連する下記の研究についても,先般朝日新聞でご紹介いただきました.

Komori, M., Miura, A., Matsumura, N., Hiraishi, K., & Maeda, K. (2019). Spread of risk information through microblogs: Twitter users with more mutual connections relay news that is more dreadful. Japanese Psychological Research, 63(1).

兵庫県赤穂市「市政特別アドバイザー」就任

2019年8月1日付で兵庫県赤穂市の「市政特別アドバイザー」に就任しました.

この職は,赤穂市長の求めに応じて,赤穂市のまちづくりに関する政策等の推進に当たって,専門的な立場から助言または提言を行うことを目的として,このたび新設されたものです.具体的には,2021年度にスタートする向こう10年間のまちづくり推進のための「赤穂市総合計画」策定に向けて,全戸アンケート調査や市に在住・通学する中学生や大学生を対象とする調査のデータ分析を通じて,社会心理学的な観点からアドバイスを行うことが求められています.

社会心理学と地域行政のコラボレーションに携われることを大変光栄に思うとともに,思春期を過ごした赤穂市に少しでもご恩返しができるよう,力を尽くす所存です.

アンケート調査結果のご報告(兵庫県赤穂市)

2019年3月4日に、兵庫県赤穂市にお住まいの2723名の方々に「社会意識に関するアンケート」を郵便にてお送りしました。3月31日までに、1229名の方から回答をご返送いただくことができました。

私たちは、災害リスクや景気状況の変化などによって日々の生活に様々な問題が起こっている昨今、国政のみならず地方政治と私たちの関わりのあり方に改めて目を向ける必要性を痛感し、2014年以来、赤穂市を対象のひとつとして学術研究を進めてきました。そして、今回このようなアンケート調査を実施させていただきました。

集計結果をこちらで公開いたしました。特に注記のない数値の単位はすべてパーセント(%)です。どうぞご覧下さい。改めて、多くの方々にご協力を賜りましたことに、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

関西学院大学社会心理学研究センター

客員研究員・大阪大学大学院人間科学研究科教授・三浦麻子
センター長・関西学院大学社会学部教授 稲増一憲

2019年5月18日付「赤穂民報」紙で,本調査結果の紹介記事を掲載していただきました.

監修書「心理学ベーシック」シリーズ完結

2017年5月より順次刊行されてきた監修書「心理学ベーシック」シリーズ(北大路書房)が,2019年1月11日の第5巻の刊行をもって完結しました.心のはたらきを科学的に見つめるまなざしを養い,「自らの手で研究すること」に力点をおいた全5巻のシリーズです.サポートサイトでは,各巻の読者の方々が,より詳しく幅広く学ぶための様々なサポート情報を提供しています.

第1巻 なるほど! 心理学研究法 三浦麻子 著

第2巻 なるほど! 心理学実験法 佐藤暢哉・小川洋和 著

第3巻 なるほど! 心理学調査法 大竹恵子 編著

第4巻 なるほど! 心理学観察法 佐藤 寛 編著

第5巻 なるほど! 心理学面接法 米山直樹・佐藤 寛 編著

シリーズサポートサイトはこちら

「心理学研究の素朴な引用によって差別的言動を正当化する行為に 対する意見声明」の公表

今般,日本の大学,特に医学部の入学試験において,学力試験の成績の「調整」を試み,その際に,特定の属性(例えば,女性)に不利な扱いをしていた事例に関する,各大学からの「説明」「お詫び」が数多く公表されています。

こうした事例をふまえ,心理学研究の素朴な引用によって差別的言動を正当化する行為全般に,心理学者有志として断固抗議する声明を公表しました。

詳しくはこちらをご覧下さい。


メディアでの紹介記事:

朝日新聞「順大のコミュ力問題、心理学会も懸念「安易な論文引用」」

毎日新聞「順天堂大「コミュ力高い」は非科学的 心理学者らが抗議声明」

有料記事ですので私のコメント部分を抜粋します:「不適切な引用も,平均値で示される一般的傾向を個別事例に当てはめることも,ありがちだがやってはいけないこと.自戒も込めて言いたい.特に入試のような場面ではなおさらだ」

 

書籍刊行(分担執筆)

遠見書房から,以下の書籍が刊行されました.第14章「集合行動とマスコミュニケーション」を執筆しています.

野島一彦・繁桝算男(監修)・竹村和久(編)
公認心理師の基礎と実践 第11巻『社会・集団・家族心理学』
遠見書房

公認心理師資格取得のための学部必修科目「社会・集団・家族心理学」のテキストです.同様の企画は他社からも今後多く展開されますが,本書がもっとも早く出版されました.書籍全体の章構成はこちらをご覧ください.集合行動とマスコミュニケーションは,私の専門領域にストライク,というわけではないのですが,社会心理学や集団心理学的な観点から現実社会をどう捉えることができるか,を意識して書いたたつもりです.それを端的に示す章のまとめの部分をちょっぴり引用します.

集合行動やそれによる集合現象は,私たちが状況によっていかようにでも動かされることを示す最たる例である。「起こす」というより「起きる」ものであるだけに集合行動や集合現象のメカニズムに関する科学的な実証は困難だが,事例から学ぶべき点は多い。危機事態に多く集合現象が発生するように,日常とは異なる状況におかれることは人間の心理に強い影響力をもち,それによって秩序というタガが外されてしまうことがある。また,常にマスメディアからの情報過多な状況にあるなか,日常においても私たちを動かそうとする状況の力はより多様で強いものになっている。「常に賢明であれ」「軽挙妄動はしないように」と言うは易いが行うは難し,である。しかし,これを逆説的に考えれば,集合行動の中にこそ人間の本性を見て取ることができるということかもしれない。

招待講演「人を対象とする行動学研究における再現性問題」

2018年9月15日に電気通信大学で行われた情報処理学会エンタテインメント・コンピューティング(EC)2018で「人を対象とする行動学研究における再現性問題」と題した招待講演を行いました.当日の資料はここから閲覧・ダウンロード可能です.お招き下さり,どうもありがとうございました.

概要

ありとあらゆる科学(を標榜する学問)にとって,ある知見が信頼に足るものかどうかを確認するもっとも有力な手段は,一度得られた実験結果についてそれが再現できるかどうかを検証することである.こうした科学の再現性問題は,2014年初頭以来世間を騒がせていた「STAP細胞問題」によって,決して望ましい形だったとは言えないが,一般にも広く知られることとなった.心理学においても,これと同じ時期に,研究の信頼性の著しい低下につながるような,あるいはそれを疑わせるような出来事が相次いで起きたが,その原因の少なからぬ部分は,研究者たちが再現性検証の試みを軽視してきたことにあるとされた.本講演では,心理学のような人を対象とした行動学研究において,研究プロセスそのものに内在するものも含めた再現性を低からしめる問題としてどんなものがあるかを述べ,それらを解消するために現に行われている取り組みについて紹介する.