論文掲載決定

下記の論文が『行動計量学』に掲載されることが決まりました.

三浦麻子・小林哲郎
オンライン調査における努力の最小限化が回答行動に及ぼす影響

This study investigated the influence of satisficing on response behavior in online surveys. We compared online response data to psychological scales and logical thinking tasks conducted by an online survey company and a crowd sourcing service. In previous studies, satisficing was found to be more likely to occur among online survey monitors than among crowd sourcing service contributors. Results of the present study replicated it and showed that satisficing in terms of inattentively reading items significantly damages the integrity of psychological scales. On the other hand, it was also found that the influence of satisficing in terms of inattentively reading instructions carefully can be reduced by raising respondents’ awareness. Those conducting online surveys should discuss taking active measures to minimize satisficing.

Key words : Online survey, Satisfice, House Effects, Mobile devices, Psychological scales

このテーマにてM&Kで手がけた6本目の論文です.調査会社モニタでクラウド登録者よりもSatisficingが生じやすいことが重ねて示され,今回は特に心理尺度の因子構造の毀損について検討しました.2017年度中に刊行・公開される予定ですが,最終稿をこちらからご覧いただけます.

2017年度卒業論文発表会(2018/1/18)

日時:2018年1月18日(木)11:10-16:40(予定)
場所:文学部本館7号教室

→発表会資料(要約PDF)

11:10-11:20 準備+はじめのあいさつ

11:20-11:35 川辺奈実 うなずきと左右の首振りが製品印象にもたらす影響-ニュートラル印象刺激を用いて-
11:35-11:50 新本由加里 表情の普遍性の再検討-gasping画像を用いた表情判断実験-
11:50-12:05 鎌田広平 外集団脅威と内集団相互依存性が内集団ひいきに与える影響

12:05-12:20 吉永杏樹 謝罪が加害者、被害者の感情にもたらす影響―パーソナリティーとの関連を考慮して―
12:20-12:35 高瀬翔子 服従への抵抗に関する実験的研究―自尊感情で権威に抗えるか―

(昼休み)

13:30-13:45 重田佳奈江 お菓子のシェア行動が初対面時のコミュニケーション及びその後の関係形成に与える影響
13:45-14:00 西山珠礼 喫煙動機と喫煙満足度の関係―たばこ依存や他者による影響の検討―
14:00-14:15 森口瑞生 大学生の子ども観と性格特性および生育環境との関連
14:15-14:30 登山珠江 病的賭博傾向と刺激欲求 日常的賭博従事者と一般社会人の比較検討

(休憩)

14:45-15:00 上尾紘暉 自我脅威状況における補償的自己高揚と攻撃的態度
15:00-15:15 佐々木映美 就活メイクは好印象を与えるのか
15:15-15:30 米田好里 「シェアハピ」は人と人を繋げるのか―菓子が初対面の二者の印象形成に与える影響―
15:30-15:45 金内さよ 報復や報恩は連鎖するか: Web実験を用いた検討

15:45-16:00 講評

※ご関心をお持ちくださる方はどなたでもお越しください.途中入退出も自由です.
※関西学院大学心理科学研究室以外の方は三浦までご一報ください(研究室関係者は事前連絡不要です).

学会賞受賞

下記論文が,日本社会心理学会第19回学会賞(奨励論文賞)を受賞しました.

三浦麻子・稲増一憲・中村早希・福沢愛 (2016). 地方選挙における有権者の政治行動に関連する近接性の効果:空間統計を活用した兵庫県赤穂市長選挙の事例研究 社会心理学研究, 32(3), 174-186.

受賞理由は,選挙運動という社会心理学的に興味深い事象について,有権者への社会調査と選挙運動の詳細なログ記録を融合させた分析という革新的な方法論で挑んだこと,とのことです.プレスリリース当初よりマスメディアからの取材依頼を多くいただき,その社会的インパクトの強さは(著者にとってはやや意外な側面に,ではありましたが)承知していましたが,学会からもこうして高い評価を頂戴できたことを大変光栄に存じております.どうもありがとうございました.

2018年度ゼミ分属

2018年4月に3年生になる皆さんを対象とするゼミ分属が始まりました.三浦ゼミに関する情報はこちらを参照してください.また,分属期間中に下記の通り「ゼミ説明会」と「ゼミ公開」を実施します.

ゼミ説明会(F地下ホール)

10月5日(木)昼休み

10月9日(月)5限

ゼミ公開(F402)

木曜1限~チャペルアワー(3年ゼミ),2限(4年ゼミ)

事前連絡不要・途中入退室自由

2017年度卒論中間発表会

卒論中間発表会を下記の日程で開催します.午前中の参加はゼミ4年生以上に限定させていただきますが,13時半からの午後の部は,どなたでもご参加いただけます.

日時 2017年9月12日(火)
場所 F104教室

11:00-11:10 <<<セッティング>>>
11:10-11:30 金内 さよ 報復や報恩は連鎖するか: Web実験を用いた検討
11:30-11:50 米田 好里 菓子のシェア行動は初対面二者間の会話を発展させるのか――ポッキーでハッピーはシェアできるのか――
11:50-12:10 川辺 奈実 うなずきと左右の首振りによる商品印象への影響 -ニュートラル印象商品を用いて-
12:10-12:30 高瀬 翔子 自尊感情の向上と服従抵抗の関連性に関する実験的研究
12:30-13:30 <<<昼休み>>>
13:30-13:50 重田 佳奈江 お菓子をシェアする行動が集団内の初対面時における会話及びその後の関係形成に与える影響
13:50-14:10 鎌田 広平 外集団脅威が内集団ひいきに与える影響
14:10-14:30 佐々木 映美 就活メイクは好印象を与えるのか
14:30-14:50 登山 珠江 病的賭博傾向と刺激欲求の関連
14:50-15:00 <<<休憩>>>
15:00-15:20 西山 珠礼 喫煙動機が現在の喫煙満足度に及ぼす影響
15:20-15:40 森口 瑞生 大学生の子ども観と性格特性及び生育環境との関連
15:40-16:00 吉永 杏樹 謝罪が加害者、被害者の感情に与える影響
16:00-16:20 上尾 紘暉 自我脅威状況における補償的自己高揚と差別的態度
16:20-16:40 新本由加里 表情認知はほんとうに普遍的なのか?-gasping画像を用いて-

監修書籍刊行

9月初旬に以下の書籍が相次いで刊行されます。北大路書房からの「心理学ベーシック」シリーズの刊行は,私が「監修」という位置づけで進めているプロジェクトで,全5巻が順次刊行予定です.すべてが関西学院大学心理科学研究室専任教員の編著によるものです.

大竹恵子 教授 編著 『なるほど!心理学調査法』(心理学ベーシック 第3巻) 北大路書房(9月5日発売) ※サポートサイト

佐藤暢哉・小川洋和 著 『なるほど!心理学実験法』(心理学ベーシック 第2巻) 北大路書房(9月7日発売) ※サポートサイト

インタビュー記事掲載(GIGAZINE)

WebニュースサイトGIGAZINEにインタビュー記事が掲載されました.心理学研究を紹介するサイエンスコミュニケーションに際してマスメディアによる報道に果たしていただきたい役割についてお話しするのが主眼でしたが,前半は「どうして研究者となったのか」ということから最近の研究に着手した経緯に至るまで,私のライフヒストリーの語りになっています.少し長いですが,それぞれ面白く読んでいただければ幸いです.

「科学研究とメディアの関係はどうあるべきか?」(2017年7月31日公開)

小川・三浦合同ゼミ2017夏

8/1に小川洋和研究室(実験心理学)と第3回合同ゼミを開催します.ゲスト参加(他ゼミ学部生,外部の方も)を歓迎します.

日時:2017年8月1日(火) 13時~

場所:F号館104教室

(1)小川・三浦ゼミの学生(各1名)による研究発表と議論(1時間×2) 13時~15時
高山博司(小川ゼミM1)
不安特性・嫌悪感受性が嫌悪プライミングによる不正行為の誘発に与える影響

人々の善悪の道徳的判断およびそこから生起する行動には、情動過程と推論・思考過程との両方が影響していると言われている。特に,嫌悪感情は我々の道徳的認知に特異的な影響を与えていることが示唆されてきた (Pizarro et al, 2011)。道徳違反に関するストーリー評定課題を用いた研究では,嫌悪感情は道徳的な判断を厳しくすることが示されている。しかし,仮定的なストーリー判断ではなく,実際の行動には嫌悪情動はどのように影響するのだろうか?今回の合同ゼミでは,卒業研究でおこなった不正行為の生起頻度に嫌悪情動が与える影響およびその影響と個人差との関連について検討した研究を報告する。

浦勇希(三浦ゼミ)
現代の多岐にわたるメディアを利用した自己開示とパーソナリティの様相

インターネットが普及する以前ではコミュニケーションの形態は限定的なものでしたが、普及してからはパソコンを利用したやりとりが可能になりました。しかしスマートフォンが普及してきた現代では、以前よりも更に簡単にインターネットを介したコミュニケーションを取ることができ、その形態は多岐にわたっています。私はこれまで、複数種のメディアを用いた自己開示の頻度と様々なパーソナリティの間にある関係性に注目して研究を行ってきました。今回の合同ゼミでは、これまで研究してきたことの報告と今後の展望についてお話させていただければと思っています。皆様からご意見をいただければ幸いです。

(2) 招待講演と討論 15時~
大坪庸介 先生(神戸大学)
道徳感情は連携罰を促進するか?

誰かが規範をやぶった場面を目撃すると道徳感情(道徳的怒り、道徳的嫌悪感など)が生起し、それが罰行動の至近要因になると考えられている。しかし、集団レベルの規範を維持するための罰行動は進化的な謎である。というのは、罰行動にはコストがかかるため、罰行使者よりもフリーライダー(規範は守るが規範維持のための罰行動はしない)の方が有利だからである。近年、この罰行使レベルでのフリーライダー問題を解決する戦略として連携罰という考え方が提唱された。連携罰は、みなが罰するなら自分も罰し、みなが罰しないなら自分も罰しないという条件つき罰戦略を採用することにより実現される。もし道徳感情が罰行動の至近要因であれば、道徳感情もみなが罰しそうなときには強くなり、みなが罰しなさそうなときには弱くなるというメカニズムがあれば条件つき罰戦略が促進されるのではないだろうか。今回の発表では、他者が特定の違反行動を非難しているかどうかの知覚により道徳感情の強さが調整されることを示した一連の研究を紹介する。

※ご発表では,「研究の裏側」的なエピソードも盛り込みながら,これから研究に着手しようとする院生・学部生にとって参考になるようにお話しいただきます.

(3) 懇親会 18時~

西宮北口駅付近を予定

終了後、西宮北口付近で懇親会を予定しています。懇親会への参加を希望する人は7月25日までに三浦までご連絡ください.ゼミのみの参加であれば事前連絡は必要ありませんが,学外の方はできれば事前にご連絡頂けるとありがたいです.

問い合わせ先:
小川洋和(hirokazu.ogawa[at]kwansei.ac.jp)・三浦麻子(asarin[at]kwansei.ac.jp)

キャリアセミナーを開催しました

心理科学各論B・ゲスト講義

『心理学は仕事にどう活かせるか?~研究所の仕事を通じて~』

櫻木亜季子先生(日本能率協会総合研究所)

6月5日(月)13:30~15:00 文学部チャペル


学生のみなさんは、“研究所という会社で働くこと”に、どんなイメージをお持ちですか?「専門性が求められる」「やりがいが高い」「激務&ハード」「長時間労働」など、プラスマイナス両方のイメージがあるのではないでしょうか。今回は、実際の業務内容や組織の実態をお話しすることで、リアルなお仕事像を捉えていただき、研究所で働くことに関心を持ってもらえばと思います。

また、“大学で学んだことと仕事のつながり”について、どのように考えているでしょうか?こちらも、「学んだことを活かせるような仕事に就きたい!」「勉強は実際の仕事には役立たない!実践あるのみ!」など、いろいろな考えがあると思います。私自身の業務経験においては、心理学を学んだことは大いに有益だったので、この点は、具体的な事例を含めて紹介します。

加えて、私は、自社の面接官を務めています。これから(もしくは今まさに)就職活動を行うみなさんに向けて、一例ではありますが、面接官としてココを見ている!という点をお話ししたいと思います。

質疑応答の時間を設けますので、みなさんのご意見・ご質問を歓迎します。今回の時間を通じて、これからのキャリアを考えるための一助となれば幸いです。

櫻木亜季子先生・プロフィール

株式会社日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主任研究員

【略歴】
2002年 奈良女子大学文学部卒業
2004年 大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了(対人社会心理学研究室)
2004年 株式会社日本能率協会総合研究所入社(現職でのキャリア12年)
【主な業務内容】
民間企業、国・地方自治体より受託するアンケート調査を通じた、組織で働く従業員のモチベーション向上や風土改善のための課題提言・コンサルティング

当日は,文学部総合心理科学科・社会学部で心理学を学ぶ学部生・大学院生・教員50名が参加しました.櫻木さんからは,ご自身のライフ/ワークスタイルのご紹介も交えて,どのような仕事をなさっているのか,またそこにどのように心理学の知識やスキルが活きているのか,具体的なエピソードを例に挙げてお話いただきました.心理学を学ぶ途上にあっては「身につけて当然」とされる知識やスキルが,実社会でどう役立つのか,貴重な能力として評価されうるのか,ある程度はイメージがつかめたのではないでしょうか.櫻木さん,どうもありがとうございました.

論文刊行

下記の論文が『社会心理学研究』に掲載(第32巻3号予定)されました.J-Stageでどなたでも閲覧・ダウンロードが可能です.論文タイトルをクリックして下さい.

三浦麻子・稲増一憲・中村早希・福沢愛
地方選挙における有権者の政治行動に関連する近接性の効果:空間統計を活用した兵庫県赤穂市長選挙の事例研究

本研究では、日本の地方選挙における有権者の政治行動に対する候補者による選挙運動への近接性の効果を、空間統計を活用した手法で実証的に検討した。兵庫県赤穂市の市長選挙をフィールドとして、社会調査によって有権者の政治行動や政治的態度、および政治に対する意識を測定し、全地球測位システム(GPS)によって候補者の選挙運動の空間位置情報を測定した。有権者の候補者への好感度には、有権者あるいは近隣の他の有権者が選挙運動に接触した程度が正の関連を持っていたが,候補者との空間的な近接性は関連がなかった。一方、投票行動については、好感度を統制してもなお、有権者自身が選挙運動に接触している程度と候補者との空間的近接性の高さが、有権者をその候補者への投票に向かわせていた。空間統計の活用により、近接性の効果をより精緻に扱うことができる可能性が示唆された。

キーワード:地方選挙、空間統計、政治行動、選挙運動

三浦は研究統括および論文執筆を担当し,稲増は論文執筆を協働すると共に有権者対象の社会調査を主導し,中村は候補者の選挙運動データの収集を行い,福沢は空間位置情報データの分析を行いました.

※調査票と単純集計結果はこちらからご覧いただけます.

日本社会心理学会広報委員会による「論文ニュース」はこちら→「市長選挙を題材とした「投票行動×GPS×社会心理学」研究」

関西学院大学によるプレスリリースはこちら→「選挙運動が有権者の心理に及ぼす効果 候補者への好感度は高めないが投票には向かわせる」

朝日新聞デジタル・東京本社夕刊でご紹介いただきました→「選挙カーで名前連呼「得票に効果」 大学教授ら密着研究」

Academist Journalで論文を紹介させていただきました→「なぜ、誰に、投票するのか? – 地方選挙における選挙運動と有権者の心理との関係

神戸新聞でご紹介いただきました→「選挙カーで名前連呼、なんと得票効果 関学大研究」

朝日新聞全国版社会面でご紹介いただきました→「脱・連呼 選挙は変わるの?」

AERA.dotでご紹介いただきました→「選挙カーからの“あいさつ”に意外な効果 地方選挙では投票数が2倍に?」