本日より日本グループ・ダイナミックス学会の機関誌『実験社会心理学研究』編集長を拝命しました.任期は2年間です.
副編集長の石井敬子先生と共に,国内研究の醸成・活性化を目指して,高いレベルの質とアクティブさを追究するべく取り組みます.
論文掲載決定
下記の論文が『社会心理学研究』に掲載(第32巻3号予定)されることが決まりました.
三浦麻子・稲増一憲・中村早希・福沢愛
地方選挙における有権者の政治行動に関連する近接性の効果:空間統計を活用した兵庫県赤穂市長選挙の事例研究
本研究では、日本の地方選挙における有権者の政治行動に対する候補者による選挙運動への近接性の効果を、空間統計を活用した手法で実証的に検討した。兵庫県赤穂市の市長選挙をフィールドとして、社会調査によって有権者の政治行動や政治的態度、および政治に対する意識を測定し、全地球測位システム(GPS)によって候補者の選挙運動の空間位置情報を測定した。有権者の候補者への好感度には、有権者あるいは近隣の他の有権者が選挙運動に接触した程度が正の関連を持っていたが,候補者との空間的な近接性は関連がなかった。一方、投票行動については、好感度を統制してもなお、有権者自身が選挙運動に接触している程度と候補者との空間的近接性の高さが、有権者をその候補者への投票に向かわせていた。空間統計の活用により、近接性の効果をより精緻に扱うことができる可能性が示唆された。
キーワード:地方選挙、空間統計、政治行動、選挙運動
三浦は研究統括および論文執筆を担当し,稲増は論文執筆を協働すると共に有権者対象の社会調査を主導し,中村は候補者の選挙運動データの収集を行い,福沢は空間位置情報データの分析を行いました.
※調査票と単純集計結果はこちらからご覧いただけます.
※論文最終稿はこちらからダウンロードできます.
小川・三浦合同ゼミ2017冬
3/10に小川洋和研究室(実験心理学)と第2回合同ゼミを開催します.ゲスト参加(他ゼミ学部生,外部の方も)を歓迎します
日時:2017年3月10日(金) 14時~
場所:F号館104教室
(1)大学院生による研究発表と議論(各90分) 14時~17時10分(予定)
発表者:中村早希(三浦ゼミD1)
【タイトル】複数源泉から複数方向の説得場面における態度変容プロセスの解明(1)
【要旨】これまでの実験では,複数人から異なる方向に説得を受ける場面においても,説得の2過程モデルによる説明が適用できる可能性が高いことを示しました。複数人から説得される状況では,被説得者は複数人の説得を同時に考慮し,説得者の属性や説得の論拠などの相対的な評価も説得に応じるかどうかの判断に使うと考えられます。しかし,現状の説得の2過程モデルのみでの説明では,こうした複数人から説得される場面特有の要因を考慮しきれていません。これからの実験では,説得者間の属性や論拠の違いが被説得者の態度変容プロセスに及ぼす影響に注目した実験を計画しています。皆様からご意見を頂けますと幸いです。
発表者:白井理沙子(小川ゼミM2)
【タイトル】社会道徳性嫌悪が私たちの知覚・認知処理に与える影響
【要旨】嫌悪感情は病原体や毒から生体を防御するために備わった原始的な反応であることが示唆されてきた (Rozin & Fallon, 1987)。しかし、嫌悪感情は人物の不道徳的な行為を観察することによっても喚起される。これまで、嫌悪感情生起の前提となる情報処理の過程に焦点を当て、生物進化の過程で獲得した嫌悪と、文化進化の過程で獲得したとされる社会道徳的な嫌悪に対する処理の違いを実験的に検討してきた。今回の合同ゼミでは、特に社会道徳的な嫌悪の対象が無意識下の処理過程や意識にのぼった後の注意処理・選好判断に与える影響を検討した研究を報告する。
ゲスト討論者:山田祐樹先生(九州大学基幹教育院),北村英哉先生(関西大学社会学部),武田美亜先生(青山学院女子短期大学),清水裕士先生・稲増一憲先生(関西学院大学社会学部)
※山田先生には当日午前中に第13回KG-RCSPセミナー(詳細下記)でご講演をいただきますので,こちらにも是非ご参加下さい.
※学外からのご参加も歓迎します.事前に三浦(asarin(at)kwansei.ac.jp)にご連絡いただければ幸いです.
(2)懇親会 18時~
西宮北口駅付近で開催します.懇親会への参加希望はなるべく早く(3/1までに)三浦(asarin(at)kwansei.ac.jp)までご連絡下さい.
問い合わせ先:小川洋和・三浦麻子
第13回KG-RCSPセミナー
日時:2017年3月10日(金) 11:10~12:40(予定)
場所:関西学院大学西宮上ケ原キャンパスF104教室
講演者:山田祐樹氏(九州大学基幹教育院)
【タイトル】認知心理学の周辺事態
【概要】どんな学問であれ,各研究者がそれぞれ独自に面白いと思うことを研究しているものである。一方で,その研究トピック選択には明らかな偏りも生じている。講演者は特に認知心理学における隙間市場をスヌーピングすることを好んできたのでそうした研究の紹介を行う。またさらに,研究トピックの偏好バイアスは研究結果の再現可能性問題やサイエンスコミュニケーションとも関連することを指摘する。これらのことを踏まえながら心理学の未来について参加者と議論したい。
※このセミナーは,公益社団法人日本心理学会サイエンスコミュニケーション研究会との共催です.
※学外からのご参加も歓迎します.事前に三浦(asarin(at)kwansei.ac.jp)にご連絡いただければ幸いです.
2016年度卒業論文発表会
2016年度三浦ゼミは,学部4年生12名が卒業論文を提出しました.1月23~25日におこなわれる口頭試問の練習を兼ねて,以下のとおり卒業論文発表会を行います.当日は,どなたでもご参加いただけますが,学外の方はあらかじめご一報いただけるとありがたいです.
卒論要約集PDFはこちらからご覧いただけます.
【日時】2016年1月19日(木) 13:30~16:50(予定)
【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパスF号館306教室
【スケジュール】
13:30-13:45 坂下愛由美 広告表現が購買意図および商品評価に及ぼす影響-限定の魅力-
13:45-14:00 野村元由揮 自己決定性が資産運用時における投資家の満足度に及ぼす影響
14:00-14:15 松田幸恵 自己価値脅威が在日コリアンへのレイシズムに及ぼす影響
14:15-14:30 中柄美那 上司のダメ出しが部下に与える影響―職務満足度および精神的健康への効果―
14:30-14:45 陳艶美 在日中国人留学生の異文化適応
(休憩)
15:00-15:15 李 韓碩 ステレオタイプと目撃証言―犯罪に関するステレオタイプが目撃証言に及ぼす影響
15:15-15:30 高城健志 インターネット上の不適切行動に対する心理学的考察―リスク認知と自尊感情の観点から―
15:30-15:45 野田晃一朗 中央競馬におけるプロスペクト理論―人気の順位を基準にして―
15:45-16:00 伊藤迪 商品提示による単純接触効果―商品選択行動における提示時間の影響―
16:00-16:15 中村祐太 隠れたプロフィール型問題解決課題による過誤の測定―2種類の過誤の発生率の違いの測定を指標として―
16:15-16:30 沖西理志 ユーモアメッセージが駐輪行動に及ぼす影響―場面想定法を用いた検討―
16:30-16:50 総括
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(当日やむをえない事情で欠席)
小松茜 印象形成における文字と音声の優位性
共著論文採択
以下の論文が,Journal of Experimental Political Science に掲載されることが決まりました.第1著者を小林哲郎さん(香港城市大学)とし,稲増一憲さん(関西学院大学社会学部・社会心理学研究センター)と3人の共同研究で,メディアの「プライミング効果」(メディアが報道するニュースは,議題設定機能を果たすだけでなく,視聴者(一般市民)が「重要な政治的争点は何なのか」を判断する際の基準の形成にも影響を与える)を実証した研究としてしばしば引用されるIyengar, Kinder, Peters, and Krosnick (1984)の実験1を追試したものです.結果はNull(原著で得られた統計的に有意な効果は見出されなかった)でした.
Kobayashi, T., Miura, A., & Inamasu, K. (2017; in press). Media priming effect: A preregistered replication experiment. Journal of Experimental Political Science.
[Final Draft] [Preregistration(OSF)]
Iyengar et al. (1984) discovered the media priming effect, positing that by drawing attention to certain issues while ignoring others, television news programs help define the standards by which presidents are evaluated. We conducted a direct replication of Experiment 1 by Iyengar et al. (1984), with some changes. Specifically, we (a) collected data from Japanese undergraduates; (b) reduced the number of conditions to two; (c) used news coverage of the issue of relocating US bases in Okinawa as the treatment; (d) measured issue-specific evaluations of the Japanese Prime Minister in the pretreatment questionnaire; and (e) performed statistical analyses that are more appropriate for testing heterogeneity in the treatment effect. We did not find statistically significant evidence of media priming. Overall, the results suggest that the effects of media priming may be quite sensitive either to the media environment or to differences in populations in which the effect has been examined.
研究知見の再現可能性検証のために,Preregistrationをした上で,なるべく厳密に(しかし現代日本の状況に合わせた)先行研究に従ったマテリアルを作成し,追試データを収集する,という手続きを誠実に履行してみた,という意味でも,よい経験になりました.なお,論文が公刊される際には実験データもDataverseで公開されるので,本研究の再分析や追試,メタ分析等の際は是非ご活用下さい.また,実験参加者募集の際はKG研究参加登録システムを活用しました.ご参加下さった皆様,ありがとうございました.
コレスポの小林さんもツイートしていますが,計画から実施,論文作成に至るまで,気心の知れた3人で楽しく(時に苦悩を共有しつつ)進めることができました.投稿から公刊までやや時間を要しましたが,こうして成果を世に問えることになり,本当によかったです.
調査結果のご報告
論文刊行
以下の論文がFrontiers in Psychology誌に掲載されました.
Miura, A., & Kobayashi, T. (2016). Survey Satisficing Inflates Stereotypical Responses in Online Experiment: The Case of Immigration Study. Frontiers in Psychology, 7:1563. doi: 10.3389/fpsyg.2016.01563
オンライン調査に回答する際に協力者が応分の注意資源を割こうとしない行動(努力の最小限化;Satisfice)が心理学の研究結果に及ぼす影響について検討しました。調査冒頭で努力の最小限化をした協力者は、事後の人物イメージ評価において、その人が他国民の場合は、その人の性格に関する情報よりも、その人の国籍に応じたステレオタイプにひきずられた回答をする傾向がありました。しかし、こうした傾向は、努力の最小限化に警告を与え、回答者の行動を修正することである程度解消されることがわかりました。
オンライン調査における努力の最小限化(Satisfice)に関する5本目の論文です.この研究はとりあえずこれで一区切りになると思います.公刊された論文は,以下のとおりです.研究に協力して下さった回答者の皆様,どうもありがとうございました.
三浦麻子・小林哲郎 (2015a). オンライン調査モニタのSatisficeに関する実験的研究 社会心理学研究, 31(1), 1-12. doi: 10.14966/jssp.31.1_1 ★学会ウェブサイト「論文ニュース」記事
三浦麻子・小林哲郎 (2015b). オンライン調査モニタのSatisficeはいかに実証的知見を毀損するか. 社会心理学研究, 31(2), 120-127. doi: 10.14966/jssp.31.2_120 ★学会ウェブサイト「論文ニュース」記事
三浦麻子・小林哲郎 (2016a). オンライン調査における努力の最小限化(Satisfice)傾向の比較:IMC 違反率を指標として メディア・情報・コミュニケーション研究, 1, 27-42.
三浦麻子・小林哲郎 (2016b). オンライン調査におけるSatisficeを検出する技法:大学生サンプルを用いた検討 社会心理学研究, 32(2).
Miura, A., & Kobayashi, T. (2016c). Survey Satisficing Inflates Stereotypical Responses in Online Experiment: The Case of Immigration Study. Frontiers in Psychology, 7:1563. doi: 10.3389/fpsyg.2016.01563
ゼミ分属関連情報
論文賞受賞
下記論文が,日本社会心理学会第18回学会賞(奨励論文賞)を受賞しました.
三浦麻子・小林哲郎 (2015). オンライン調査モニタのSatisficeに関する実験的研究 社会心理学研究, 31(1), 1-12.
受賞理由は,斬新な着眼点からの研究成果により,社会心理学のみならず他領域にもインパクトを与えたから,とのことです.まさにそれは我々の狙いとしていたところで,できれば日本の調査会社にも同様のポジティブなインパクトがあればよいと願っています.ありがとうございました.
論文刊行
『社会心理学研究』第32巻2号に掲載予定の以下の論文が,J-Stageで早期公開されました.正式(冊子体)刊行は2016年11月の予定です.
三浦麻子・小林哲郎 (2016). オンライン調査における努力の最小限化(Satisfice)を検出する技法:大学生サンプルを用いた検討. 社会心理学研究, 32(2).
本研究の目的は、オンライン調査における努力の最小限化(Satisfice; 調査協力者が調査に際して応分の注意資源を割かない行動;Krosnick(1991))が、大学で研究者から依頼された調査に回答する大学生サンプルでどの程度生じるのかを多様な指標で測定して検討するとともに、努力の最小限化傾向を示す個人をなるべく効率的かつ正確に検出する有効な技法を探索することである。9大学で実施したオンライン調査の結果、各種検出指標の予測力は総じて高くなかった。また、測定法の差異によりオンライン調査モニタとの直接比較はできないが、大学生サンプルの努力の最小限化傾向は全般的に低かった。大学生サンプルを対象とする際は努力の最小限化傾向の検出に「躍起になる」必要はなく、むしろ調査内容によって回答環境を制御することの方が重要であると考えられる。
キーワード:努力の最小限化(Satisfice)、オンライン調査、大学生サンプル、Lasso
調査マテリアルや分析スクリプトなどのオンライン資料は→こちら(Study 3)←からダウンロード可能です.
関連論文
- 三浦麻子・小林哲郎 (2016a). オンライン調査における努力の最小限化(Satisfice)傾向の比較:IMC 違反率を指標として メディア・情報・コミュニケーション研究, 1, 27-42.
- 三浦麻子・小林哲郎 (2015b). オンライン調査モニタのSatisficeはいかに実証的知見を毀損するか. 社会心理学研究, 31(2), 120-127. doi: 10.14966/jssp.31.2_120 ★学会ウェブサイト「論文ニュース」記事
- 三浦麻子・小林哲郎 (2015a). オンライン調査モニタのSatisficeに関する実験的研究 社会心理学研究, 31(1), 1-12. doi: 10.14966/jssp.31.1_1 ★学会ウェブサイト「論文ニュース」記事 ★質問項目リスト